いつそば「我聞の章」 |第6話「近くて遠い家」 by Shougyo
話

仏さまのこばなし

いつそば「我聞の章」

やさしい法華経物語

ウッキ〜くん

妙ちゃん

グリトラクータ童話

image

  そこに行けば、どんな夢もかなうというよ。
  誰もみな行きたがるが、遥かな世界。

 私と尊きお師匠さまの生きた時代から、三千年を隔(へだ)てた日本でのヒット曲、ゴダイゴの『ガンダーラ』だ。

 私の名は阿難(あなん)。私がお師匠さまの光と風の世界を旅する時、よくこの詩を思い出す。この曲はテレビ番組『西遊記』のテーマソングでもあった。そして物語の中で、お師匠さまと私の生まれた北インド地方のことは「天竺(てんじく)」と呼ばれていた。

 しかし、この天竺を目指したのは、なにも孫悟空(そんごくう)や猪八戒(ちょはっかい)・沙吾浄(さごじょう)に守られた玄奘(げんじょう)三蔵法師だけではない。彼ら以外にも、実際に多くの僧侶たちが経典を求めてシルクロードを通り、天竺へ向かったのだ。これについて小説家の宮本輝(てる)という人は「香料や絹(きぬ)や異国の美女ではなく、智恵や徳を求めての旅であったということが尊い」と言っていた。まさに、その通りだと思う。

 さて、『ガンダーラ』の二番はこう始まる。

  生きることの苦しみさえ、消えるというよ。
  旅立った人はいるが、あまりに遠い。

 生きることの苦しみを消し去るには、智恵と徳しかない。本当にそう思ったからこそ、いくたびも命の危険にさらされながら、人は長い長いシルクロードを渡ったのだ。そして、無事に唐の都「長安(ちょうあん)」へ運ばれた経典は、訳経僧(やっきょうそう)という人たちによって、古代インドの言葉である梵語(ぼんご)から漢文に訳された。中でも、お釈迦さまの最高の教えである『法華経』は、鳩摩羅什(くまらじゅう)三蔵法師によるものだ。

 しかし、後に問題となったのは、経典がバラバラに運ばれたために、どの経典が尊きお師匠さまの結論なのかが分からなくなってしまったという点だ。そんな時、長安で訳されたすべての経典を数回にわたって読み通した人がいた。天台大師智ギ(てんだいだいしちぎ)、中国の小釈迦とまで呼ばれた人だ。この方がすべての経典の内容を緻密に考察した結果、やっとお釈迦さまがお説きになった教えの順序が判明する。もちろん、智ギによる結論については、日蓮聖人を始め法然・親鸞・道元といった鎌倉仏教の祖師も、みな異論はなかった。

 そして、説かれた教えの順序を決定づけるのが、『法華経』第四章に説かれる次の物語だ。

 昔あるところに一人の大富豪がいて、彼には遠い昔に生き別れになった一人息子がいた。あるとき息子を見つけた大富豪は、すぐさま彼を家に呼ぼうとするが、息子は父のことが分からず、恐れおののいて逃げてしまう。そこで息子を便所の掃除人として雇うところから始め、だんだんと高度な仕事を与えて、ついには支配人にまで取り立てて、すべての仕事を任せるに至る。そして死期が近づいたことを知った大富豪は、多くの者を集めて「この支配人こそ私の実の子であり、今ここですべての財産を彼に譲る」と宣言するのだった。

 簡単な仕事から始まって、順に大切な仕事を任せ、ついには支配人の仕事が務まるまでに育て上げる。これは、我が尊きお師匠さまが、悟りを開かれてからお亡くなりになるまでの間、次第に浅い教えから深い教えへと、順を追って説き進んでおられたことを意味している。

妙法蓮華経「信解品第四」より/つづく)

what's newdiscourseseasontalesideadownloadlinkmyoabout "myo"site mapNOEC

HOME

Since 1999, Nichiren-shu Osaka Enlightenment Center. All teachings are opening up.