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 日頃の不勉強がたたって、いよいよ書くネタに困って来た。この原稿も、編集局長から申し渡された〆切日を過ぎてしまっている。編集局の皆さん、ゴメンナサイ。

 そこで奥の手を。読後感想文でお茶を濁そうと企(くわだ)てた次第。実を申せば、副題ほど余裕のある状態ではないのだが。

 「インテレクチュアルズ」(ポール・ジョンソン著/共同通信社発行)という書物をある週刊誌の書評で見たのが去年の十月、すぐに注文して読みかけたのが三月のかかり、僧侶がこんなに忙しいものとは露ほども思っていなかった、というのが正直なところ。

 帯のうたい文句には、「全米ベストセラー。知の巨人たちの驚くべき実像!」とある。

 例えばジャン=ジャック・ルソー(即ち、第一章しか読まずに感想文を書く、という余裕のなさ!決して読者諸兄をナメているのではありません)については、こんな具合である。

 「ルソーの名声の大半は、子どもの教育に関する理論から得られたもので『学問芸術論』『エミール』『社会契約論』そして『新エロイーズ』でさえ、主要なテーマは教育の拡充におかれていることからすれば、実生活において、著作とは裏腹に子どもにはほとんど興味を示していないのは奇妙というほかない」といった調子で、この後ルソーが手伝いの女性に産ませた我子を五人も孤児院に捨てた(当時の状態では文字通り捨てるに等しい)とある。

 つまり、彼は、自分が父親となるのを避ける為に、テレーズが子どもの世話に手をとられるのを防ぐ為に我子を捨て、その上で公教育の必要を説いたのだ、というわけである。

 著者の言うことが正しいとしての話であるが、ここには、事の原因や結果について、一切の責任を他者に押付けようという姿勢が典型的に現れている。

 ルソーの資質にもよるのだろうが、西欧で発達して来た(つまり西欧社会に広く受入れられた)様々な思想の根底に流れている姿勢がここにも見てとれる、ということである。

 全知全能の創造者が第一原因なのであるから、極端に言えば一切の責任は神が負わねばならない。仏教の因果論(いんがろん)だと、必然的に“自業自得”(じごうじとく)という考え方が出て来るのだが、キリスト教社会には希薄(きはく)である。

 唯一の救いとなるものは原罪(げんざい)意識であろうが、これとて、長い歴史の中では教会による世俗支配の根拠として使われただけで、世俗の側の自己卑下(じこひげ)を助長(じょちょう)したに過ぎない。

 “ルネッサンス”という輝かしい歴史もあるではないかと反論されそうだが、ことルソー(他にもマルクス等大勢いる)について言えば、“神”が“社会”や“国家”にすりかわったに過ぎない、と言えよう。

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