のほほん評判記 |
いつものことですが、今回もあまり仏説とは関係ありません。 本書はそのタイトルから類推される内容(何かのネーミングの本)からは大きく逸脱して、言葉の三要素(表記・意味・音)の中で音にだけ着目した論考です。ほかに類書はありません。しいて挙げれば『吽字義(うんじぎ)』という真言の音に関する解説書がありますが、なにしろ平安時代です。 本文中、真言(マントラ)について、一定の音を繰り返し唱えるという口伝から、音が潜在意識に与える印象に興味が向かったそうです。そして現代社会において、一番多く唱えられるものとは?当然の帰結として人や物の名前にたどりつき、その音を対象に研究を始めたそうです。 本書では「あ」から始まって「ん」で終わる母音と子音が整然と並ぶ五十音を例に、日本語の発音が詳しく解説されます。そして専門的な内容と並行して「よし子」さんと「なつ子」さんは、どちらが活発な性格になるかなど、楽しい具体例をあげながら、名前を一つ一つ検証していきます。決してイージーなネーミングの本ではありません。 言葉の響き−音そのものが持つ印象という「あやふやなもの」を数量化し、文字で表現しているところに本書の価値があります。 |