のほほん評判記 |
臨床心理学と宗教学者の対談集。それぞれの分野でアカデミックな立場にある両氏が、汎(はん)仏教の視点で仏教思想の本質を検証する内容になっている。と言っても決して難しい本ではありません。対談ですから口語体ですし、注釈も充実しています。 仏教をキリスト教と、あるいは神道・イスラム教と比較する。またヨーロッパとアジアというように文化的土壌を比較する内容で、解りやすく退屈しない読み物になっています。 そして何よりも宗教家でない両氏には、一切の建て前も遠慮もなく、社会的良識の範囲内で極限までテーマを追求しています。例えばシャーマニズムやタントラ密教、セクシャリティに関することなど、興味本位になりがちな主題に対しても、あくまで公正に、そしてユーモラスな語り口調で突きつめていきます。 タイトルにも現れているように、仏陀(ぶっだ)に対する敬愛の念と、仏教のもつ救済の力の肯定がこの本のテーマでしょう。その分、現代仏教が抱えるいくつかの問題点についても、かなり辛辣(しんらつ)な意見が提示されています。耳が痛かったり、忸怩(じくじ)たる思いにかられたり、逆に励まされる時もあります。仏教の知識があまり無い方であれば、素朴に思ういくつかの疑問が解決されるのではないでしょうか。 |