のほほん評判記 |
いま法華経を生きるために役立つ本を紹介する、というこのコーナー。まわりくどい本が多かった。今回は単刀直入に日蓮聖人のお手紙についてです。 日蓮聖人の遺(のこ)された文章をさして御遺文(ごいぶん)といい、特に個人宛のお手紙を御消息(ごしょうそく)と言い習わしています。 これら御遺文は『昭和定本日蓮聖人遺文』全四巻という形で、真偽未決、図版も含めて完全に網羅(もうら)されていますので、いつでも誰でも手にすることができます。 ところが、なのです。この『昭和定本』。原本に忠実なので、漢文は漢文のまま、旧字はもとより国字・俗字もそのまま採用されていて、どうにも読みづらいのです。そこで平易に、しかし正確に編集されたダイジェスト版はないだろうか……。 本書『ご真蹟にふれる』は本文の解説はもとより、筆の種類、使い方、紙の種類、状態といった近代文献学の成果を踏まえた傍証(ぼうしょう)を論拠に、聖人がお手紙を認(したた)めた状況や心情を推(お)し量った内容になっています。 ご供養いただいた品々に対する礼状から、相談事に対する回答、教義に関する解説など、まるで聖人から私信を頂いているようなものです。信仰とはそういうものではないでしょうか。 |