のほほん評判記 |陰翳礼讃(いんえいれいさん) by Kaijo

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のほほん評判記

image 著者/谷崎潤一郎
発行/中公文庫
価格/476円

 仏教の荘厳美術は豪華絢爛(けんらん)、悪くいえば装飾過多ともいえる。金色を主体に原色が使われ、天井からは瓔珞(ようらく)や天蓋(てんがい)が下がり、み仏は様々な装身具を身に付ける。もちろん、それはみ仏の威徳や仏国土の佇まいを目に見える形に表現したからであり、また経典や儀軌(ぎき)によって色・形が定められているからである。いわく、如来の肌は金色であるべしと。

 ところが素朴な信仰の感覚からすると、古色を帯びた仏像や堂宇(どうう)のほうが、霊験がありそうに感じるものだ。奈良にある薬師寺の金堂前にある、新旧の五重塔のどちらかに惹(ひ)かれるか、という設問なら解りやすいだろうか。大方の人は旧と答えられると思う。

 同じ仏教国でも、タイやミャンマーあたりは完全に新の方で、寺院は金銀原色で飾られ、褪色(たいしょく)すれば元の色に塗り直される。これはただの美に対する感覚の違いで、どちらがどうという問題ではない。

 この日本人の美意識の底に潜む侘(わ)び寂(さ)びを経て、幽玄(ゆうげん)にいたる美の感覚を「あっ、そうなのか」と気付かせてくれるのが本書である。著者は説明不要の文豪。やや片寄った傾向の作品が多いが、本書は古典・絵画・能・食べ物といった具体的な事物に対して、エッセイの語り口で論考した肩のこらない一冊である。

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