のほほん評判記 |日本人の心のゆくえ by Chijo

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のほほん評判記

image 著者/河合隼雄
発行/岩波書店
価格/1,470円

 対岸の火事という言葉がある。ご承知の通り、他人の不幸を好奇心で受け止め、我がことのように感じない心境を意味する。さてさて、実際こうした心境になったことなど一度もなく、いつも他人の幸福だけを願っている人、一体この世界にどれくらいいるんだろう。

 とまあ、いきなりこんな問いかけをしたところで、何だかでき過ぎた坊さんの説教みたいだから論点を少しずらそう。

 私たちが住んでるこの国は、世界全体から見ると確かに小さな島国だけど、それでも一億二千万人もの人間がその上で生活する広大な国土、海に浮かぶ超巨大な船「日本丸」ってわけだ。

 甲板の掃除をしなければ当然船は汚れていくし、規律を失ってしまうと乗組員の人間関係はギクシャクし、船の安全な運航にも支障をきたす。みんなが「自分の意志」を尊重したいには違いないが、規律を失うとついつい「他人の意志」を尊重するのを忘れがちだ。あたりまえのことかもしれないが、規律とは本来「共存」のための大切な智恵なのだ。

 さて、今の日本人の在り方に少しでも疑問を持ち、また考えたことのある人は、その疑問や考えが深ければ深いほど、本書の内容に強く共感するだろう。現代人は「考える力」「悩む力」を失ってきたと言われ始めて久しい。しかし、より多くの疑問を持ち、思い悩み、考えることは、人として非常に大切で尊い行為であるということを、決して忘れてはならない。なぜなら多くの疑問は必ず多くの答えとつながっていき、確実に目の前の世界を広げていくからだ。

 導き出された答えの数々は、やがて自分が思いもしなかったところで、別の答えとバッチリつながることがある。そうして多くの答えが整然と統合されたところに、今まで気づかなかった大きな「規律」が見えるのかもしれない。それこそが、仏教でいう「悟(さと)り」の境地なのではないだろうか。

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