のほほん評判記 |大江戸エネルギー事情 by Chijo

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のほほん評判記

image 著者/石川英輔
発行/講談社文庫
価格/480円

 文明開化が高らかに叫ばれた明治という時代がその国に到来する以前、そこには成熟した合理性を持つ社会と華やかで繊細な文化が息づく、当時としては世界最大の規模を誇る都市が栄えていた。その国の名は日本。そしてその都市の名は『江戸』。

 鎖国時代という言葉でくくられ、物質文明崇拝(すうはい)の歴史の陰に埋もれていったその都市は、決してわれわれ現代人が思うような封建的で窮屈な所ではなかったのではないか。

 人間の都合によって環境を作り変え、便利さと引き換えにジワジワと自分たちの首を締めていくような消費を続ける現代の日本に対し、人間の方が環境に合わせてしなやかに時代を生き、大自然の恵みを必要十分に利用しきるという、本来的なリサイクルが当たり前のようになされていた時代が、当時の日本には存在していた。それはあたかも、国の名前は同じでも、今の日本とは全く異なる思想と社会をもつ別の『日本』という国が存在していたかのように……。

 本書ではエネルギーの消費量という観点から、精密なデータをもとに江戸と現代という両時代の生活がつぶさに比較されており、その念の入った検討ぶりにははなはだ恐れ入るばかりだ。しかもそれは単なる雑学、或いは懐古趣味の域にとどまらない。現代人の生き方に警鐘(けいしょう)を鳴らしつつも、江戸の生活・文化を鮮やかに浮かび上がらせることにより、地球という名の小さな宇宙〈ミクロコスモス〉の中にいきる我々人間という広い視野から、自然と人とがいかに関わっていくべきかを、大江戸の発想を持って提案しているのである。

 また、現代におけるリサイクルショップの隆盛について、気づかぬ内にしみ込んだ、ミクロコスモスに生きた先祖の知恵が、必要に応じてよみがえっているのだという著者の推理は非常に興味深い。

 姉妹編『大江戸テクノロジー事情』と合わせて読むことにより、江戸の思想が更に憧憬(どうけい)となって我々の意識を刺激する。

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