のほほん評判記 |
書店に於ける本の並べ方の一つに平積みというのがあって、書棚の下にせり出した台上に、表紙を上に向けて何冊かを積んで置いてあるアレのことである。そこには大抵の場合新刊や話題の本、あるいはその書店が独自に時代性や地域性などを考慮して、特に販売に力を入れている本が並べられており、なるほど書棚に背表紙を見せて立ててある本に比べ、断然目につきやすく手にも取りやすい。ある程度大きな書店ならば、入り口近くなどの一番目立つ場所に、この平積み専用の台が備えられているものだ。 さてここ数年の間、そういった平積み本の中でも軒並みに増えてきたジャンルの本というのがある。すなわち断然目に付きやすく売れやすい本。それはいわゆる「生き方のコツ」といったような、主に社会や家庭における対人関係に悩む人達のための指南書(しなんしょ)とでも言うべきエッセイ集なのである。売れる本というのも、また今の時代を反映してると言えよう。 こういった本を何冊か読むにつけて、その内容が極めて仏教的であるとともに、その著者自身もまた仏教そのものに造詣(ぞうけい)が深い場合も少なくないことが判る。今回ご紹介する本はそのものズバリで、読んでトクする仏教説話の数々を現代に照らし合わせて解りやすくまとめたもの。春夏秋冬の四巻が発行されている。 お釈迦(しゃか)さまがお話された事というのは、今となっては遠い遠い昔話と言えるかもしれない。しかしそれらをまとめた経典は、二千年以上にわたって世界のあちこちで読み継がれている。まさに永遠のベストセラーと呼ぶにふさわしい。それは仏教が倫理や常識といったものとは一線を画し、時代や国をも越えた普遍性(ふへんせい)をもつ教えであるからに他ならない。 |