自在生活ノススメ |
「勝利の方程式」「人生の勝利者」「〜必勝法」「〜に負けない方法」等、本屋に行きますとこの様な見出しの本がたくさん並んでいます。
私はかなりの負けず嫌いです。ですから、ついついその方法を知りたくて手に取り買ってしまいます。 プロの棋士で名人にもなられた米長邦雄という方がおられます。この方の著書「勝負の研究」の中で、勝負に勝つ秘訣を「勝負というのは、相手がどこでどうくるか、まるで予想がつかない。従って勝とうとするなら、まずどういう局面になっても、対応できる技量を身につけておくことである」と述べられています。 しかし、プロ野球チーム・東北楽天イーグルスの監督をされていた野村克也氏は、この説明に対して「相手がどういう手できても対応できるというような技量を持てるというのは、天才であり、我々凡人にできるはずが無い。凡人の勝つ秘訣は、相手を出来るだけ調べ局面ごとにあらかじめ策を練り、練習しておくことである」と反論されています。 勝負に対するこの二つの意見、皆さんはどちらの理論に賛同されますか? さて、将棋というゲームは、序盤でこそ固定した戦型がありますが、中盤・終盤になると持ち駒が増えるなどして、戦略が無限に広がっていきます。ですから、あらかじめその局面を想定することは不可能であり、勝つには最善の手を選べる技術や能力が必要となってくるわけです。こういうゲームの特性から、米長名人は「どういう局面でも対応できる技術が必要」と解説したのでしょう。 将棋に対して野球は、局面を固定して考えることのできるゲームのひとつです。例えば、ピッチャーをボストンレッドソックスの松坂大輔選手、バッターをシアトルマリナーズのイチロー選手と想定し、得点差やアウトカウントなどを設定することでイメージをすることが可能なわけです。それ故、過去のデータを集めて事前に研究し、あらゆる対策を講じておくべきであると野村監督は述べられたのだろうと思います。 つまり、米長名人も野村監督も、自分の経験に則って勝負理論を述べているのです。他にもよく作家や見識者が人生の指針について語られるのを耳にしますが、それらは往々にして特別な経験則で述べておられるのではないでしょうか。 人の説く秘訣は、いかに天才・名人といえども、万人に通用するとは限りません。しかし、お釈迦さまの説く秘訣はそうではありません。万人が幸せになる法華経という秘訣を残して下さいました。これを知り実践する事が、利己的な心に負けず、生まれた意味を勝ち取る秘訣ではないでしょうか。 しかし、もう秘訣を知っているはずなのに、色々買ってしまっている私はどうなんでしょう? |