自在生活ノススメ |
私が修行させていただいているお寺の、本堂と庫裡(くり)が改築される折りのこと。工事が始まり、仮住まいのマンションへと引っ越しの準備をしていると、三十年ほど前に買った一枚のレコードが見つかった。今でもたまにラジオで耳にする、堺正章の「さらば恋人」。しかし私はB面の「気楽に生きよう」の方が何となく好きだった。古いレコードのジャケットを見ながら、ふとそんなことを思い出した。
歌詞の内容は、気楽に生きることの楽しさ、素晴らしさを謳(うた)ったものなのだが、頭を丸めて二十年以上になる私にとって、本当に気楽に生きるとはどういうことなのだろうか?引っ越し準備の手を止めて、しげしげとジャケットを眺めながらそんなことを考えた。 すべての生命体が本当に気楽にその命をまっとうできれば、こんなに素晴らしいことはないわけで、お釈迦さまが教えをお説き下さった目的も、平たく言えばそういうことなのかもしれない。 書店をのぞけばノウハウもの花盛りの昨今、はたして気楽に生きるための究極のノウハウとは、いったいどのようなものなのだろう。思うに、お釈迦さまこそがそれを説かれたのではないだろうか。一言で言うと「仏教」であり、もう少し硬い言い方ならば「教義」「教学」となる。そう、お坊さんがよく使うこれらの難しい言葉。結局のところお釈迦さまの教えは「気楽に生きるための方法」そのものであり、わざわざ難しい言葉に置き換えるから、話がややこしくなってしまうこともあるのだ。 ノウハウとは、つまりところ「こうすればこういう結果になるから、こうしなければこうならない」ということだ。そしてお釈迦さまによる「お経」というノウハウ本には、心の形の整え方にそうした理論編(教え)に加え、実践編(修行)も用意されている。一般のノウハウものとは、ひと味もふた味も違うのだ。仏教を学ぶっことて、まさしく「生き方」そのものなんですネ。 |