お釈迦さまは、次ように続けられました。
「その昔『雲雷音宿王華智仏(うんらいおんしゅくおうけちぶつ)』という仏さまがおられて、その国には『妙荘厳(みょうしょうごん)』という名の王がいた。ところがこの王は婆羅門(ばらもん)の法を深く信じていたので、二人の王子とその母であるお后(きさき)は、王が早く真実の教えに目覚め仏になっていただくようにと願っていた。
そこで王子たちは、后の許しを得て雲雷音宿王華智仏のもとで法華経を修行し、王に数々の神通力を示したのだ。すると王はたちまち仏の教えに関心を寄せ、自らもこの如来さまに随順(ずいじゅん)して仏になることができた。そして国中に仏教が広まり、やがて王は出家して法華経を広めるにいたった。
よく聞くがよい。以前に『法師品』(ほっしほん)で説いたように、これら后と二人の王子は妙荘厳王を救うため、望めば得られる清浄(しょうじょう)な国土を捨て、あえて后となり王子となってこの国に生まれたのだ。そしてお前たちも皆、まわりのものを仏にさせるためこの世に生まれて来ている。無限の過去世にお題目の種を受けたことや、この世に生まれた目的を早く思い出し、広く法華経を説いて全宇宙のすべての事物を成仏させなさい。
さて、先ほどの妙荘厳王の后とは実は今の『華徳菩薩(けとくぼさつ)』であり、二人の王子とは今の『薬王菩薩(やくおうぼさつ)』と『薬上菩薩(やくじょうぼさつ)』なのだ。こうして彼らは過去世において無数の如来のもとで善根(ぜんこん)を植え、功徳(くどく)を積んできた。彼らを敬い、彼らと同じように法華経を広めなさい」
その時に普賢菩薩(ふげんぼさつ)が現れ、自分たちがお釈迦さまの亡き後、どのように法華経を実践すればよいかを尋ねました。
するとお釈迦さまは、こうお答えになりました。
「先ず諸仏に護られていることを思い、善根をつみ、正定聚(しょうじょうじゅ)に入り、一切の衆生を救おうという固い決心で進むことだ。この四法を守っていれば、必ず法華経を生きることになる」
すると普賢菩薩はお釈迦さまの前で、次のように固く約束されたのです。
「末法の世で、法華経を信じる者を守りましょう。法華経の教えのとおりに修行しようとする人たちが万が一つまづくようなことがあっても、法華経が決して絶えることの無いよう、その人の修行を手伝いましょう」
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