お釈迦(しゃか)さまから常不軽菩薩(じょうふきょうぼさつ)の教えを聴いた人たちの中から、上行菩薩(じょうぎょうぼさつ)たちが前に進み、こう申し上げました。
「私たちは、お釈迦さまが身をお隠しになった後、どの世界ででもこの法華経を広めたいと思います」
するとお釈迦さまは、法華経が根本の真理であることの証(あかし)として、世にも稀(まれ)な十種類の神通力を現されました。文殊菩薩(もんじゅぼさつ)をはじめ、この娑婆世界(しゃばせかい)に元からいた菩薩や、そのほか一切の衆生は、こうした目の前の現象に深く納得したのでした。
その様子を見て、お釈迦さまはこのように説かれました。
「地涌(じゆ)の菩薩たちよ。法華経の功徳(くどく)は、このように力ある如来(にょらい)たちでさえ説くことができないほど大きなものなのだ。如来のすべて、宇宙のすべてがこめられている。だからお前たちは私が身を隠した後、この経で説いたように、一心に実践しなければならない。何時であれ、どのような所であれ、法華経がある所には塔を建て、この経に供養しなければならない。よく理解して、他人のために説いたなら、寿量品で説いた「如来の無限の慈悲(じひ)」をそのまま実践したことになるのだ。他人を成仏に向かわせ、おまえ達はその身そのままで仏になるのだ」
またお釈迦さまは立ち上がり、文殊菩薩達の頭を右手でおなでになって「おまえ達にもこの法華経を授けるから、上行菩薩たちと同じようにして広めよ。法華経の道理をよく理解して、一切のものに如来の知恵を与えなければならない。もし如来の知恵を信じようとしない者がいれば、この経以前に説いた教えを使ってでも、仏の真の智恵、法華経の教えを納得させよ」と説かれたのです。
菩薩たちはますます尊崇(そんすう)して、三度まで「世尊のみ教えのままにいたします」とお誓い申し上げ、お釈迦さまは分身仏(ふんじんぶつ)や多宝仏(たほうぶつ)に対して、元の仏国へ戻られるよう言われました。そして如来も菩薩もその他一切の衆生も、根本の真理「法華経」を聴くことができて大いに喜び、満足したのです。
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