昔々、インドの小さな村にスジャータという名の娘が住んでいました。彼女は尼蓮禅河(にれんぜんが)という川の浅瀬を毎日渡っては、隣村に住む聖者に供物を届けていました。
ある日、スジャータがいつものように出かけると、川辺に若い修行者が虫の息で倒れていました。長い断食と苦行のせいですっかり痩せこけ、川で身を清めたところで力つきてしまったのです。
しかし彼女は、姿はボロボロになりながらも、徳をたたえた彼の顔立ちを一目見て思いました。
「私は今まで、自分が徳を積んで良いところに生まれ変われるよう、聖者と呼ばれる人に供物を届けていた。しかし、今この尊いお方を救わないで、何の徳があるだろう。私はこのお方と出会い、このお方をお助けするために、ずっと目の前の川を渡り続けて来たに違いない」
そうしてスジャータは、聖者に捧げるはずの乳粥(ちちがゆ)を、彼に捧げたのです。
おかげで修行者は体力と気力を回復し、苦痛にも怠惰にもかたよらない安らかな境地で座り続けました。そしてついに覚(さと)りを開き、皆から「お釈迦さま」と慕われる、本当の聖者となられたのです。
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