昔々のこと、川に住む毒蛇が魚を追いかけ、誤って人間の網にかかってしまいました。そうして身動きが取れなくなった姿を見るや、魚たちはいっせいに蛇に襲いかかったのです。
体中かみつかれ弱り果てた蛇は、死に物狂いで網の目を食い破って水際まで逃げ出しまた。蛇はとても悔しく思い、どちらが悪いか白黒つけてもらおうと、そこで寝ていた青蛙にはい寄りました。
「あの魚たちは、身動きがとれない私に、卑怯にも大勢で襲いかかってきた。君はどう思う?」
すると青蛙はこう答えました。
「いや、私はそうは思わない。君もそばに魚が来れば食べるだろう。今度のことだって同じこと。自分たちの方が有利だと分かれば、魚は君に襲いかかってくる。自分の縄張りに入って来たものを誰だって逃しはしない。自分に力がある時は他を脅かし、力が無くなれば今度は脅かされる運命となる。かすめ取ってはかすめ取られ、その繰り返しの中で生きているのだ」
青蛙は自らを諭(さと)すようにつぶやき、生きているものの宿命の悲しさをかみしめていました。
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