マカダ国の都に、天性の美しさのため町中の男たちから慕われ、彼女と一夜を過ごすためには千金を必要としたシリマーという名の遊女がいました。
彼女は縁あってお釈迦さまに帰依(きえ)し、仏弟子となって修行僧たちを熱心に供養していました。しかし多くの者たちは彼女の美貌(びぼう)に惑わされ、修行どころではなくなってしまったのです。
やがてシリマーは、病のため若くして亡くなってしまいました。そしてこの時、お釈迦さまは王にこうお伝えされたのです。
「彼女の遺体は火葬しないでそのまま墓地へ運び、鳥や犬に食われないよう注意するように」
四日目、遺体は腐って膨(ふく)れ上がり、その中からウジが這(は)い出し始めました。すると王は、町中の人々に墓地へ集まるようにおふれを出し、お釈迦さまにもこのことをお伝えしたのです。
すぐにお釈迦さまは、彼女に恋した修行僧たちを連れてシリマーの遺体の元に集まりました。そして彼らは、美しく見えるものも無常の理(ことわり)に支配されていることを知り、改めて修行に励んだのです。
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