ある日、修行僧の衣のたもとに一羽の鳩(ハト)が飛び込んで「どうか私をかくまって下さい」と頼みました。間もなくして、今度はそれを追っていた鷹(タカ)がやってきて、鳩を出してもらうよう修行僧に言いました。
しかし僧は「命は大切なものだ。尊ばねばならぬ」と答え、鳩を出そうとはしませんでした。すると鷹はこう言って、その修行僧につめ寄ったのです。
「あなたは鳩の命ばかり説くが、私の命はどうなっても良いのか」
しばらく考えた後、僧は重い口を開きました。
「……よろしい。この鳩と同じ重さの肉をあなたにあげよう」
そして彼は自分の体を削って天秤(てんびん)に乗せ、鳩の重さと比べました。しかし、どれだけ肉を削り続けて乗せても、小さな鳩の重さとつり合いません。ついに気がふれたようになった修行僧が、血まみれの全身を天秤に投じると、やっと重さが釣り合ったのです。
私たちが日ごろ口にするどんな食べ物にも、等しく同じ重さの命があります。
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