病身のブッダは、クシナーラのサーラ樹の下に身を横たえ「弟子たちに教訓を与えずして入滅することはできない」とお考えになられました。意志の力によって病痛を沈められたブッダは、ブッダの入滅が近くなったことを悲しんで一人で泣いているアーナンダに、こうおっしゃいました。
「アーナンダよ、悲しんではいけない。泣いてはいけない。生じたものはすべて、滅しないものはないのだ。汝(なんじ)は長い間、慈愛のある心・言葉・行為をもって如来(にょらい)に仕(つか)えてきた。大きな功徳(くどく)を積んできたのだ。さらにいっそう精進せよ。そうすれば必ず聖者の境地に至るであろう。
アーナンダよ。自分たちにはもはや頼るべき師はなくなる、と嘆(なげ)いてはいけない。私の亡き後は、私が説いた法と律が汝らの師である。今も、私の滅後も、自身を灯とし、自身を拠り所として他に頼ることなく、真理を灯とし、真理を拠り所として他に頼ることなく、ひたすら修行に励むのだ。その者こそが私の弟子、暗黒を越えるものなのだ」
こうしてブッダは、大いなるご入滅の時をお迎えになられたのでした。しかしアーナンダは、その時まだ悟りを開くことができなかったので、滝のように涙を流し、大声で嘆き悲しみました。
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