チュッラパンタカ(周利槃特=しゅりはんどく)は、優秀な兄マハーパンタカにくらべ、生れつき愚鈍(ぐどん)で、短い一句の詩も暗記することができませんでした。兄も何とか彼を一人前の修行僧にしてやろうと努力したのですが、あまりに物覚えが悪いので、我慢しきれずに弟を精舎(しょうじゃ)から追い出してしまったのです。
途方にくれているチュッラパンタカに気付かれたブッダは、彼にこうおっしゃいました。
「東に向かって『チリ、アカを除け』と言いながらこの布をなでていなさい」
そうしてブッタは、彼に一枚の真っ白な布を与えられたのです。チュッラパンタカはブッダに教えられた通り、毎日その布をなで続けました。するとはじめは真っ白だった布も、彼の手垢(てあか)ですっかり汚れてしまいました。そこでブッダは「チュッラパンタカよ、この布だけがチリやアカで汚くなったものだと思ってはいけない。人間の心の中にあるチリやアカを除きとることが大切なのだ」と説き聞かせられたのです。
こうしてチュッラパンタカも、ブッダの教えようとされていることがよくわかり、阿羅漢(あらかん)とよばれる聖者の位に到ることができたのでした。
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