むかしむかし、インドのコーサラ国に、スダッタという大金持ちが住んでいました。
ある時彼は、隣国でお釈迦さまのお説法を聞いて大変感激し、是非とも自らの国に教団の全員を招くことのできる施設を建て、皆に法を説いて欲しいと願ったのです。
しかし、すべての条件を満たす土地となると、ジェーダ王子が所有する自然公園しかありません。そこでスダッタは「お金はいくらかかってもかまいません。どうかあの公園をおゆずり下さい」と王子にお願いしました。
すると王子はこう言いました。
「そんなにあの土地が欲しいなら、お前の持っている黄金を敷きつめた分だけ分けてやろう」
スダッタは全財産をなげうち、自分の服や家まで売って黄金に換え、公園にそれらを敷きつめていきました。その様子を見たジェーダ王子は、彼の熱意とお釈迦さまのご威徳(いとく)にすっかり感服し、土地を無料で提供すると共に、敷かれた黄金も建築費の一部に充てられ、ついに広大な精舎(しょうじゃ)が完成したのです。
こうして、平家物語の冒頭にも登場する「祇園精舎」は、お釈迦さまをはじめ千人・二千人ものお弟子たちが食事をし、寝泊まりすることのできる、仏教教団随一の住居となりました。
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