いつそば「我聞の章」 |第5話「ただ一つの処方箋」 by Shougyo
話

仏さまのこばなし

いつそば「我聞の章」

やさしい法華経物語

ウッキ〜くん

妙ちゃん

グリトラクータ童話

image

 現状認識。

 企業の再構築、つまり世にいう「リストラ」はこの現状認識から始まり、構造不況にあえぐ多くの会社でよく耳にする言葉となった……。

 私の名は阿難(あなん)。今また、尊きお師匠さまの「光と風の世界」を旅している。そして思い出す。あのとき尊きお師匠さまが示されたのも、私たちの住む世界に対する現状認識だったから。

 その現状とは、誰もが実感し難いものだった。しかし「棒ほど願って針ほど叶う」というように、私たちが針ほどでも理解するためには、棒ほどに様々な角度から、様々な表現を用いる必要があったのだ。お師匠さまは、私たちの住んでいるこの世界の現状を、一つの家に譬(たと)えて表現された。

 その家は柱の根っこが腐りはて、梁(はり)や棟(むね)は傾いて、壁は破れて裂けている。さらに家の中をヘビ・マムシ・サソリ・クソムシ・イモリ・ムカデ・イタチ・ハツカネズミなどが走り回り、山の妖怪である魑魅(ちみ)、木や石の妖怪である魍魎(もうりょう)がうごめき、青ぶくれた鬼や黒い体の鬼などが居座っているという。

 そこへ追い打ちをかけるように、この家は大火事になる。しかしそうした恐怖も知らず、家の中で遊び戯(たわむ)れている子供が私たちだ。そして父親であるお師匠さまは、たった一つしかない出口から、子供たちを無事に家の外へ導いて下さった。そう、五百人も住めるほど広い家だというのに、出口はたった一つしかなかったのだ。

 これは、あくまで巧妙な譬え話だ。様々なキーワードが、パズルのように組み合わさってできている。この譬え話から、私たちは何をイメージできるだろう。

 お師匠さまが今まで用意して下さっていたのは、三つのタイプに対する修行法、いわば三種類の処方箋だった。それらは私たちにとって、どれも理想的な人格のモデルであり、人として生きる手本であり、目標値といえるものだった。だから、私たちがこれらの処方箋に従って行動すれば、タイプの違う者たちでも、各々が理想的人格を身につけることができると信じていた。

 ところがお師匠さまは、その時こうおっしゃったのだ。

「私は今まで三種類の処方箋と、それらに従うべき三つのタイプの修行者というものを示してきた。しかし、本当に理想とする人格を身につけるための処方箋は、たった一つしかない」

 現状認識。そしてお師匠さまのお導きに従って心のリストラを行えば、それが同時に社会・世界が平和になるリストラとなる。その方法は、たった一種類の処方箋による、たった一つの理想的人格の完成しかないということなのだ。

妙法蓮華経「譬喩品第三」より/つづく)

what's newdiscourseseasontalesideadownloadlinkmyoabout "myo"site mapNOEC

HOME

Since 1999, Nichiren-shu Osaka Enlightenment Center. All teachings are opening up.