いよいよおシャカさまが広場にあらわれて、お話しを始めました。あれだけにぎやかだったたくさんの人たちも、みんないっせいにシーンと静まりかえって、じっとお話しに耳をかたむけます。
「わたしたちはみんな、知らないうちに何度も何度も生まれ変わっています。わたしはその間もずっと、たった一つの願いを心に思いつづけてきました。わたしがそう始めに思った時がどれくらい大昔だったのかを、まずお話ししましょう。
ここにたての長さも、よこの長さも、高さも、ぜんぶが七キロメートルづつある大きな岩山があるとします。その上をとても柔らかい布で一回だけなでる。そして百年たったらもう一回なでる。そうして百年に一回づつだけ布でなでつづけて、ついにその岩山がすりへってなくなるまでの、気の遠くなるような年月。この長い長いを時間を一劫(いっこう)といいます。
ではわたしが、たった一つ願いを始めに心に思ってから今日までには、いったいどれくらいの時間がたっていると思いますか?それは、この一劫を数えられないくらい重ねた、もっともっと長い年月なのです。
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