先日、二十三歳の若者がこの世を去った。症例の無い難病と診断されて一年半、入退院を繰り返しながらも今年の三月に車椅子で大学の卒業式に出席。学友に励まされながら再起を誓い、卒業記念に家族で温泉旅行も楽しむことができた。

　彼の死はＳNＳで瞬く間に拡散し、お通夜・葬儀の式場は入りきれないほどの友人であふれ返った。彼はその魅力と人間力により、二十三年間で多くの人と強い絆で結ばれたことをうかがい知った。

　フランスの作家が書いた『星の王子さま』という作品がある。小さな惑星から地球に来た王子さまが、キツネから「大切なものは、目に見えない」と教えられるのだ。私は以前、小学生たちに「皆さんにとって、目に見えない大切なものとは何でしょう？」と聞いてみたことがある。「友情・感謝・心」と、どれも正解だった。先ほどのお葬式に参列してくれ友人たちも、同じように考えてくれたのだろう。

　お通夜の最後で参列者全員が合掌し、彼に聞こえるよう大きな声でお題目を三回唱えた。その功徳は見えなくても、祈りによって仏さまとつながっていると実感した。目に見えない「心」を他の人のために！