年寄りというとあまり良いイメージはないが、本来の意味は「人生経験を積んだ人」「学徳の優れた人」を指す。年寄りと言われれば、喜ばなくてはならない。私はいつか「頭が下がる年寄り」になりたいと思っている。

　数年前、遠方からの友人がやってきて「京都のおすすめスポットに連れて行って欲しい」と頼まれた。そこで、数々の宝物が展観できる本山・本法寺にお参りした。運よく貫首さまがおられ、色々なお話を聞かせて頂いた。

　翌朝電話が鳴り「ご住職はいらっしゃいますか？」と貫首さまのお声。私は何事かと思いながら昨日のお礼を申し上げると、すかさずこうおっしゃった。

「昨日は私のつたない話をお聞き下さり有難うございました。そこで一つおうかがいしたいことがあって、お電話を差し上げました。昨日の私の話の中で、ここを直せばもっと分かりやすくなる、良くなるというようなことがあれば、お教え頂きたいのです」

　八十路を超えてもなお、孫の歳ほど離れている若輩に教えを請う姿勢に、私はただただ恐縮するばかりで何も答えられなかった。こんな年寄りになりたいと思う、今日この頃の初老の私だ。