いまお寺に、知り合いの一歳十ヶ月の女の子が泊りに来ている。その子と本堂に行って遊んでいると、お経箱を開けて一巻づつ私に持って来ては、途中でお経本を読んでいるような仕草をする。私の読経の姿を見て、真似をしているのかもしれない。

　お教本を戻すように言うと、また一巻づつ戻してくれて「お利口さんね」と褒めてあげる。そうした行動を繰り返し繰り返し行うのだが、この年代の子にはよくあることのようだ。

　あるテレビ番組で、卵焼きを生業とする東京下町の職人さんが紹介されていた。朝二時か三時に起きて卵を割り、卵焼き器に次々と入れて焼き上げていく。その作業のスムーズさと正確さ、さらに焼き加減の難しさが映し出されていた。その職人さんは、同じことを数十年繰り返して来たという。

　私たちも、毎日のご修行が大事ということだろう。日蓮聖人は「一生空しく過ごして万歳悔ゆることなかれ」と述べておられる。空しく過ごして、悔いが残る人生にはしたくないものだ。一歳十ヶ月の女の子に教えられている。