年末年始、新聞・テレビで「テロ」という言葉を目にしない日は無かったように思われる。本当に悲しいことだ。

　テロとはテロリズムの略で、「政治目的のために、暴力あるいはその脅威に訴える傾向。また、その行為、暴力主義」と説明される。

　まともに戦っても絶対勝てない相手に、命を捨てて一矢（いっし）報いるというところから、テロをやや肯定的にとらえる論調もある。だが、もとより人間として許されない行為であり、仏教で最初に守るべき約束事である「殺してはならない・殺させてはならない・殺すことを許してはならない」という不殺生戒（ふせっしょうかい）とは、対極にある考え方だ。

　一方、中国による宗教弾圧に対し、分かっているだけで百六十人以上のチベット仏教徒が、焼身自殺による抗議を行っている。決して報復に及ばない態度は尊い。しかし、自らを殺すという不殺生戒に反する行為は、はたして仏教徒の真の姿と言えるだろうか。

　ただ一貫して言えるのは、武力に対し武力で訴えないということ。世界三大宗教の中で、唯一仏教を信奉する者は宗教戦争をしなかった。今こそ、その誇りを声を大にして叫びたい。