ある日、ヨシ子さんは取り込んだままの洗濯物を廊下に積み上げていると、お姑さんに注意された。
「ヨシ子さん、洗濯物は取り込んだらすぐにたたまないとシワになりますよ」
「分かってますよ、お義母さん!私も他に手の放せないことがあるんです!」
別の日、ヨシ子さんは母親に同じことで注意された。
「ヨシ子、洗濯者は取り込んだらすぐにたたまないとシワになるじゃない」
「分かってるんだけどね、母さん。ちょっと手の放せないことがあったのよ」
言葉のわずかな違いを読み取って頂いただろうか?
お姑さんも母親も同じことを言っている。むしろ、お姑さんの方が気をつかっているように思えるが、ヨシ子さんの反応は母親に対する方が穏やかだ。
同じ内容であっても、相手によっては同じに聞こえず、異なった返事になる。けれども、同じことは同じこと。同じに聞こえて同じ返事が出来る人間になる。これも『仏道修行』なのだ。
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