「今年も一年、健康でありたいですか？」と問われて、「いいえ」と答える方はいないだろう。やはり皆いつまでも健康でありたいと願っている。しかし「健康診断を受けていますか？」と問われると、「いやぁ〜…なかなか足が向かなくて」という答えが返ってくることが多々ある。

　健康な身体であり続けるためには、現状認識は欠かせない情報である。現状が健康であれば維持、健康でなければ治癒・改善が求められる。

　ところが、現状認識が健康であり続ける第一歩であるにもかかわらず、その一歩がなかなか踏めないのはなぜだろう？　これは自分が不健康である、または病に冒されているという現実をつきつけられることへの恐怖が、そうさせているのではないだろうか。

　仏教には苦（く）・集（じゅう）・滅（めつ）・道（どう）の四諦（したい）という教えがあり、解り易く説明すると、現状認識（苦）・原因究明（集）・理想設定（滅）・方策実践（道）というそれぞれの因果関係が説かれている。つまり、何事も現状認識から始まり、その原因をつきとめて、理想に向かって方策を実践することが道理に適った物の見方なのである。

　人間誰しも知りたくない現実がある。しかし、その現実から目を背けていても理想は実現しない。いつまでも不確かな健康による偽りの安堵感に身を任せていても、何も変わらない。何事も理想への強い想いと実現の喜びをもって、第一歩を力強く踏み出していきたいものである。