あるお弟子が、お釈迦さまに「仏教を信じる者と、信じない者の違いは何ですか?」と質問した。するとお釈迦さまは、こうお答えになった。
「仏弟子は二本目の矢を受けることはない。一本目の矢は身体に刺さる。二本目の矢は心に刺さる。身体に刺さる矢は避けようのない場合もあるが、心に刺さる矢は避けることができるものだ」
先日、年回法要のためお檀家さんの家にお参りした。読経が終わり、いつものように法話を始めると、奥さんがお茶を運んできてくれた。その時、後ろからの気配を感じたご主人が動いたために、お盆が肩に触れお茶がこぼれてしまった。
ご主人が大声で「気をつけんかい!」と怒鳴り、奥さんが「あんたが急に動くからや!」と応じた。親戚の前なのでそれで収まったが、その晩も喧嘩が続いたかもしれない。
しかし、ご主人が「悪い、わしが急に動いたからや」と謝り、奥さんも「いや、私が不注意でした。ごめんなさい」と謝れば、騒動はその場で収まり、まわりの人たちも「仲の良い夫婦やな」と思ったことだろう。
お茶がこぼれたという事実は同じでも、結果はまったく違う。お茶がこぼれたのは一本目の矢、喧嘩が始まったのは二本目の矢だ。
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