いまこの国では、不安をかき立てる多くの要素が顕在化（けんざいか）している。子供たちのことを、ただ一様に「未来を担う希望」と表現しがたい現状を目の当たりにし、今の社会が、そうした子供しか育てられない多くの大人たちで構成されている事実に、ただ愕然（がくぜん）とする思いだ。

　私たちは、世界や国のかかえる問題が、そのまま地域・会社・家族、果ては個人がかかえる問題と直結していることを知らねばならない。そして、いかに自分が弱く、無知で無力であるかを自覚しておく必要がある。

　ややもすると他人を含め環境のせいにするような、卑劣で臆病な自分。その存在意義を守るために、怒りをもって他人を批判し、正当性を主張せずにはおれない自分。

　私たちは怖れずに自分の弱さを認め、なおプライドを失わないことが肝心だ。そのプライドとは「自分のあるべき生き様を見極める努力を怠らない」という、人間としての尊厳である。

　私たちは、一日でも早く先入観という重いまぶたを開き、他人との関わりから自分を見つめ直すべきだ。そして、この世に生を受けた意義と、果たすべき役割というものを見いだし、残されたわずかな時間を活用しなければならない。