どんな生物も、誰に言われるでもなく、自ら生きるために成すべきことを自然に行っている。
たとえば動物なら呼吸がそうだし、食べるという行為も欠かせない。そして猛獣と呼ばれるライオンやトラにしても、必要以上の狩りはしないものだ。
しかし人間は違う。もっとたくさん、もっとおいしく、もっと楽しく……。単なる食欲以外の何かが働いているようだ。どうやら人間は、必要以上を望む動物のようで、求めて得た後もさらに先を求めようとするのは、人類の性(さが)なのかもしれない。
しかし一方で、ただ食べて寝る以外に人生に意味を見いだそうとするからこそ、文化や芸術、そして宗教が生まれたと言える。
生物の進化の歴史は、未知への挑戦と選択の歴史だ。文化や芸術が時代を超えて人の心を動かすのも、それらを通して人類という種の新たな挑戦の一端を、私たちが垣間見ているからではないか……などとは考えすぎだろうか?
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