パソコンをお持ちの方なら、「アイコン」という言葉はおなじみだろう。パソコン内に保存されたソフトやファイルを直感的に操作できるよう、モニタ画面に並べられた小さな絵のことだ。

　このアイコンという言葉はギリシャ語の「イコン」から来ており、もともと「類似」という意味を持つ。そしてキリスト教における、キリストや聖母マリアなどを描いた絵画や塑像（そぞう）もイコンと呼ばれる。

　これらは単なる装飾品ではなく、「信仰や聖なる力を呼び起こすための目に見える形」だ。そして仏画や仏像、寺院における天井画やふすま絵にも同様の意味がある。

　建築や絵画・彫刻・工芸などの造形美術の世界では、それ自体すでに完結した形と意味を持っているにもかかわらず、さらに美しく深い生命力を与えるため、様々な装飾が加えられる場合がある。そこには「祈り」や「魔よけ」といった、信仰的意味が込められることも多い。

　寺院や仏像といえば、金色の装飾が印象的だ。これは仏さまの智恵と慈悲が、太陽の光のように世界をあますところ無く照らし、生きとし生けるものの生命を育（はぐく）むというメタファーに他ならない。