ラジオ・テレビ覧以外は必要としない人にとって、大変お買い得？な新聞として「聖教新聞」がある。日刊でラテ覧付きなら最も廉価なものとして知られ、一方ではこの新聞を発行している宗教団体の信者たちが、友人や取引先などに熱心に購読を依頼することから、義理で取っている人も見かける。

　最近、学校の保護者会でのお付き合いから、この新聞を取るようになった奥さんから、こんなお話をうかがった。

「お上人、私は宗教のことはよく分からないけど、ともかくどんな宗教でも、みんなが仲良くすることや、お金より大切なものがあることは、必ず教えていると思うんです。でもあの新聞の、個人攻撃の記事と銀行広告の多さには驚かされます」

　ああ、なんということか。私はそれを聞いて、この新聞を発行している宗教団体についてとやかく言うよりも、自分自身の懺悔（さんげ）が先に立った。お釈迦さまの説かれた妙法をそのままに受け入れている人なら、自らの正しさを主張するため他を排除する必要も無いだろうし、頼まなくても自然と人が寄り添い、その人と行動を共にしようとするだろう。

　信仰を持つ者にとって、自身の信仰に傷を付ける態度だけは厳に謹まねばならない。私たち僧侶には、良くも悪くも「慣れ」がある。だから、先入観のない人の言葉には時折ハッとさせられるのだ。