「肩たたき、親孝行、今不幸……」
リストラという言葉が世間をにぎわす昨今、両親をいたわる暖かな手も、今や転職をうながす上司の冷やかな手とへ変わってきた。言葉の意味も、時代につれて変遷(へんせん)をとげることは間違いない。
例えば「ウチの仏さん」とはよく聞く言葉であるが、その言葉が意味するものは「今は亡き肉親」であり、本来の意味である「ご本尊」を指すことは皆無に等しい。言葉には約束事がつきもので、それを失った時、他人との意思の疎通(そつう)も怪しくなっていく。
正しい言葉、正しい日本語。これらを考える時、先人がなぜそのように発音し表現したのかを、私たちは知る必要があるのではないだろうか。語源に思いを巡らすこともなく、語意に不用意であったなら、お釈迦さまのご説法に水を差すことになりかねない。お釈迦さまのご遺言である『涅槃経(ねはんぎょう)』には、「法に依(よ)りて人に依らざれ」とある。
時代に即応した言葉の使い方も、また大切なことだろう。しかし我々はいつも、お釈迦さまに帰って教えを理解するべきではないか。ならば「成仏」とは亡き人を指すのではなく、お釈迦さまのような理想的人格者となり、お釈迦さまと同様、仏法を伝え続ける生き方をすることに他ならない。
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