何事につけても、段取りの悪い人はいるものだ。もちろん性格に負うところも大きいだろうが、人は自分が前向きになっている内は、先を見越して「次に何をすべきか」を考えるもので、他人の協力が必要な場合も、どんどん自分から動いて周囲を巻き込んでいく。

　しかし受け身になり、やる気を失った人の行動力は、格段に低下する。次に取るべき手段を見失い、いや、見ようとしないので、本来なら予測し得た様々な問題点に突然ぶちあたり、面食らって立ち往生してしまう。

　またそうした段取りの悪さが、協力してくれる周囲に不信感を与え、「アイツは名誉が欲しいだけだ」「アイツの独りよがりに自分は付き合わされている」と思わせる結果をまねく。

　話は変わるが、世間では「ＩＴ」という言葉もすっかり定着した感がある。ＩＴとはインフォーメイション・テクノロジーの略で、要は「情報技術」という単純な言葉だ。技術の発達と通信網の拡大により、時間と距離の制約が大幅に緩和されることを意味する。

　携帯電話を始め、いつでもどこでも相手を呼び出し、情報を交換することのできる最先端の道具が、街にあふれてきた。受け身の状態でも、情報が次々と流れ込んでくる時代。それと引き替えに、相手を尊重し、先を見越して今を計画的に段取りする智恵は、失われていないだろうか？