政治家の汚職問題をはじめとして、乳製品や食肉業者の偽装事件等、目先の利益に目がくらんだため、単純な倫理道徳を忘れてしまう人たちが後を絶たない。

　数年前も、大蔵省や日本銀行の接待汚職で、逮捕者の相次ぐ事件があったが、その時と同様、報道を受けて逮捕された人たちを口を極めてあしざまに批判する人たちも、やはり後を絶たない。

　さて、私はもとより皆さんも含めて、自らが逮捕された人たちの立場に立った時、はたしてそこに至るまでの数々の誘惑を断固としてはねつけることができただろうか？多くの人が、いや、もしかして大部分の人が、自分や家族・社員の保身のために、他人をおとしめてしまう心を持っているのではないだろうか……。

　日蓮聖人は「自分の心を法華経の鏡に映せ」とおっしゃっている。 他人の欲望が犯罪という形で露呈（ろてい）した時、それを罵（ののし）る言葉は、８割の「ねたみ」を２割の「正義感」で包んだものなのかもしれない。

　罪を犯した人が相応の裁きを受け、償（つぐな）わなければならないのは当然のことだ。しかし、彼らが犯した過ちは、自分たちも犯す可能性があるということを認識する必要がある。各々が勇気を出して自身の心と向き合うこと無しに、平和な世の中など実現し得ない。