檀家さん宅へご回向の途中、ある駐車場で管理人のおばさんとの会話。

「おじゅっさん、いっぺんお祓（はら）いしてくれへんかなぁ」

「どうしたんですか？」

「最近いやなことばっかり続くねん。この間も新婚ホヤホヤの娘ムコが交通事故におおてん」

「お祓いより、もっとよう効く方法があるで」

「どないしたらええのん？」

「一生懸命に南無妙法蓮華経ってお唱えするんや」

「一生懸命に南無妙法蓮華経って唱えたら、嫌なことなくなるのん？」

「無くなれへんで〜」

「それやったらアカンがな」

「ところでおばさん、この間までええ天気やったけど、今日は雨やなぁ」

「ホンマにうっとおしいなぁ」

「人生かて、そんなもんちゃうか？日本晴れもあるけど、雨の日も寒い日も台風の日もあるやんか。要するに避けて通れんわけやな」

「ほんなら何で南無妙法蓮華経って唱えんの？」

「人生の中でドシャ降りや台風みたいなつらい目におおても、それに耐えて乗り越える力がわいたり、そもそも『つらい』なんて思わん考え方ができるようになったら、嫌なことも嫌や無くなるやろう」

「おじゅっさん、ええこと言うなぁ」

「僕が考えたんとちゃうで。お釈迦さんや日蓮聖人に習うた通りに言うてるだけや」

「いや〜、今日はええこと聞いたわぁ、おおきに有り難う。ほな、駐車料600円」