私立高校の入学試験が始まった二月、ある中学校で一人の男子三年生が、誰もいない雪の積もったグランドで、何やら作業に励んでいたそうだ。そして何人かの生徒が校舎の窓からそれを見つけ、彼が雪の上に、足で大きくこんな文字を書いていることに気づいた。
「みんな合格しろ!」
グランドの彼は進学せず、すでに就職も決まっていた。そこで今まさに試験を受けている友達に、雪に書いた文字で声援を送っていたのだ。
同じく雪の日、あるJAF職員が救援の知らせを受けて現場へ向かった。しかし雪で動けなくなった車は見つかっても、ドライバーの姿が見えない。するとそばのマンションの窓が開き、持ち主がキーをほうり投げてこう言ったそうだ。
「そこの車庫に車をいれておいてくれ!」
雪の中を駆けつけたこの職員は、仕事で来たとはいえガックリしたとか……。
太陽の運行は誰に対しても平等だ。ならば人によって「良い日」「悪い日」があるのはなぜか?「日々是好日(にちにちこれこうじつ)」という言葉にある通り、もともと「誰にとっても悪い日」がある訳ではない。
雪が積もって足下の悪い日。これが人の心一つで、友愛を育(はぐく)む日にもなれば、感謝を忘れ人を落胆させる日にもなる。
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