lotus column |忘れていたもの by Shougyo
what's new  「男は外に出ると七人の敵がいる」と、古くから言われている。しかし実際には七人以上、いや何十人、何百人と闘うことは、日常茶飯時になってしまった。そう、毎朝・毎夕の通勤ラッシュの光景は、まさに電車内の席取り合戦だ。

 確かに、これから職場に向かおうとする時、少しでも体を休めて万全を期したい気持ちは理解できる。仕事に疲れて帰路につく時、ゆっくり座って帰りたいという気持ちも分からないではない。しかし皆のそういう気持ちが車内で結集され、毎日毎日くり返されているのが、この席取り合戦なのだ。以前『朝日新聞』の「声」の欄では、これをなげいて「日本人は何か大切なものを忘れているのではないか」とくくられていた……。

 今から1400年以上も前、仏教はインドから中国・朝鮮を経て日本に伝わった。そして仏教を説いたお釈迦(しゃか)さま、すなわち仏さまについて、古人はその慈悲(じひ)を讃(たた)えこう詠んでいる。

「仏とは、何を岩間の苔(こけ)むしろ。ただ慈悲にしくものはなし」

 また仏さまの言葉である経典をひもといてみると、そこに私たちは「慈しみをもって身を修(おさ)め、善く仏の智恵に入る」というお言葉を見い出すことができる。

 これなのだ。日本人が忘れていた大切なもの、それは慈(いつく)しみの心なのだ。仏さまがこの世に現れ、法を説かれた目的は、そのまますべての人々への慈悲(じひ)と直結しており、それが「我らと衆生とみな共に仏道を成ぜん」というお言葉にも表れている。

 毎朝・毎夕の通勤列車の中、自分が疲れている時、隣の人も前の人も後ろの人も、みんな疲れているのではと考えてみる。その余裕を失ってはならない。

what's newdiscourseseasontalesideadownloadlinkmyoabout "myo"site mapNOEC

HOME

Since 1999, Nichiren-shu Osaka Enlightenment Center. All teachings are opening up.